審査員評

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審査員長:

深澤 直人(プロダクトデザイナー)

審査員評

プロフィール

「Without Thought」と表現する自身の思想のもとに、人間の無意識をデザインに置き換えるワークショップを開催し続ける。2003年独立しNaoto Fukasawa Design設立。
イタリア、ドイツ、フランス、北欧、などのメジャーブランドの仕事の他、国内の大手メーカーのデザインを多数手がける。「MUJI」壁掛け式CDプレーヤー、「±0」加湿器、「au/KDDI」INFOBAR, neonはN.Y.MOMA永久収蔵品となる。受賞歴は60賞を超え, 2007年 ロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(英国王室芸術協会)の称号を授与される。武蔵野美術大学教授、多摩美術大学客員教授。
著書「デザインの輪郭」(TOTO出版)、共著書「デザインの生態学」(東京書籍)、作品集「NAOTO FUKASAWA」(Phaidon)。
「THE OUTLINE 見えていない輪郭」(2009/10/16~2010/1/31)
21_21 DESIGN SIGHTにて写真家 藤井保氏との展覧会を開催、同タイトル書籍を出版 (アシェット婦人画報社)。

 

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ナカサ&パートナーズ
仲佐 猛(写真家)
中道 淳(写真家)

http://www.nacasa.co.jp/

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近藤 康夫(インテリアデザイナー・九州大学大学院教授)

http://www.kon-do.co.jp/

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Jamo associates
高橋 紀人(デザイナー)
神林 千夏(スタイリスト)

http://www.jamo.jp/

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graf
服部 滋樹(デザイナー)

http://www.graf-d3.com/

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特別審査員:
菊池 武夫(クリエイティブディレクター)
http://40ct525.com/

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松宮 宏(WSCAプロデューサー・作家)

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審査委員長・総論 深澤 直人

表面的にカッコいいものや、単にクールなものなどが、年々「選ばれない」傾向が強まってきている。今年は、より本質的な部分で「方法論そのものが心地良い」と感じさせる作品や、「共感できる」提案が審査員の心を捉えていた。そういう意味で、今回選ばれた大賞作品も審査員たちに敬意を評されて選ばれた作品だと思います。審査員も、「ああ、こういうのがあったらいいね」と感じるものを、おそらく皆さんが想像している以上にフラットな状態で選んでいるし、受け手(お客さん)の立場に立ちながら、かなり客観的にジャッジしている。ジャストアイデアではなく、細部までしっかりと練られて、なおかつ丁寧に作り込まれたものであることも、もちろん大前提だと言えます。

 

コンペの参加者の意識においても、「何が良いのか?」、「どんな空間がショップとして心地よいのか?」という考え方やアプローチが年々変わってきているのも事実です。今年の傾向としては、空間として実際に目に見えるものだけではなく、もっと別の次元で感じている“価値”を表現しようとしている作品が多かった。それゆえに、「ビジュアルではなかなか表現しきれないもの」や、ただ美しいのではなくて、「その“場”や“空間”で感じられる別の要素」を作り込もうとしている作家(参加者)が結構多かったように思います。そういう提案が多く見れたことは、選んでいる側としても大変楽しかった。

 

新部門/Tシャツコンペについて

Tシャツそのものは、ご存知のとおり別に新しいものではなくて、ブランドが持っているシンボルのようなもの。つまり、日本人における「白いご飯」みたいなものだから、これを題材にデザインするとしたら、ブランドにはそれなりの力や思い切りが必要になってくる。Tシャツ自体がものすごくベーシックなアイテムで、みんなの意見がバラバラだからこそ価値が見出されるわけですから。そういった意味で言えば審査員の判断のベクトルも揃いにくいことも事実です。単に平面でのデザインやオーディナリーなアイデアではなく、他とは違う新鮮な提案が求められているということが、変わらず次回も重要なポイントになっていくと思われます。

 

Q)Tシャツ/モバイルショップデザイン部門では、「おかもち」の作品にかなり反応されていましたが?
「モバイル」というテーマをこんな風に解釈するのか!と、とても新鮮だった。ここ数年、店という業態自体に、枠やくくりが無くなってきている。最近では「箱作って、店構えて」という枠組みを取り払って、自分たちの好きな場所で布広げて商売している人も増えていますから、「おかもち」はそういう兆しにおいて、とても自然に受け止めることのできる提案だった。現代はいろいろなことがルール化され過ぎている環境ではあるけれど、商売自体は“トレードオフ”、“物々交換”から始まったというその歴史を紐解くと、路上でどこでもショップが開けるという考え方は、ものすごくベーシックなものの売り方だと言える。一見真逆と思われるインターネット(OS)の世界も、どんなところでも布を広げてお店になるという「おかもちショップ」と同じ考え方でどんどん市場(いちば)を生み出していることを考えると、リアルショップの世界でも、これからもっとこのスタイルが広まって行くような気がします。

 

いずれの部門においても共通して言えるのが、“兆し”を捉えていくことの重要性。巨大なアパレルメーカーでのデザインコンペにおいては特に、世の中の動きや予兆をいち早く読み取った作品が人の心を捉えるし、そうした提案が少しずつ増えてきていることはとても喜ばしい傾向です。デザイナー自体がいろいろな観点から世の中を変異させて、プラットフォームを解放するような、そういう立場になってきたんだということを、当コンペを通じて改めて実感させられました。

 

深澤 直人(プロダクトデザイナー)

 

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ナカサ&パートナーズ 仲佐 猛/中道 淳

不景気な時代になると、世の中的には「安いものじゃないと売れない」という考えが主流になります。でも実際、今の時代は「ただ安い」だけじゃものは売れない。安くて、なおかつ機能が優れているとか、他のものとの違いや魅力がはっきりしているものじゃないと、お客さんはなかなかお財布の紐を緩めない。
カメラマンも、たとえ同じデジタルカメラだろうと「人と違う写真」が撮れないと、いつかきっと仕事は来なくなります。同じ被写体を写したとしても、後処理とか、どこからどこまでをフレーミングして、どこを切り取るかといった技術やセンスの部分で他との違いを打ち出していかなければならないわけです。

とにかく、今の時代は、どんなことでも「他との違いが何か?」という点が重要なのだと思います。

20年前のバブルの崩壊時も今も、「予算の無いなかでショップをつくる」という条件は変わりません。20年前は、シンプルな提案をベースに知恵を活かして、間接光をうまく使ったりして、いわゆる原点回帰的な考え方が主流。でも、もちろん今の時代はそれとは違うわけです。驚くほどのスピードでいろいろなことが多様化していますし、空間にもサービスにも多様性が求められている。ただシンプルなだけではダメなんですよね。

審査の最中に神林さんが「ネットが普及してパソコンで何でも買えてしまう時代だけれど、“実際に手に取って”“触って”、という体験を促したり、こういう時代だからこそ、人間の“触感”に対する意識をもっと大事にしなくちゃいけないな」と言ってましたが、私もそれに同感です。

そういう意味で、今年大賞に選ばれた作品には、そうした“人のぬくもり”や、“人との違い”が、はっきりと表されていた。

 

Q)来年はどうなるのでしょう?

僕自身は、やはりショップはダントツに突き抜けている方が面白いと感じるし、その方が断然人の心にヒットすると思います。あとはやはり、色気を感じさせてくれる空間をもう少し見せてもらいたい。来年も、楽しみにしています。

 

中道 淳(写真家)

 

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近藤 康夫

全体を通じての感想になりますが、プロフェッショナル部門が去年よりもバラエティに富んでいて面白かったのが印象的でした。海外からの応募が増えているのも興味深い傾向です。学生部門の作品は、過去の傾向を研究し、踏襲したものが目立ちましたが、もっと思い切った案があっても良かったのではないでしょうか。最終的に大賞に選ばれた作品は、これまでに無い新しい『場』の魅力を持ったアイデアだと思います。

今年は、そうしたアイデアが、コンペ全体において良い空気を生んでくれていました。ビジネスをポジティブに捉えて、うまく前向きに変換する人が増えてきたのかもしれません。

審査の際、私は、誰もが選ぶであろう無難な作品よりも、オリジナリティや発想で人を惹き付けるデザインに票を投じました。
プランの整理やプレゼンの仕方などは、かなりレベルが上がってきていますから、更に、その中に楽しさや素直さを感じさせるアイデアを期待しています。

Tシャツ部門について

テーマが「Tシャツ」に限定されているからこそ、画期的なアイデアが求められます。印象的だったのは、「おかもちショップ(作品名:おかもち)」や「バケツショップ(作品名:Freddy World Pop Up Shop)」のような新しい発想。勢いのある作品が増えると、審査する側にとってもいい刺激になり、コンペ全体の温度も上昇します。こういう良きムードメーカーになってくれる作品が、来年のTシャツ部門にも、多く登場することを期待しています。

 

近藤 康夫(インテリアデザイナー・九州大学大学院教授)

 

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Jamo associates 高橋 紀人 / 神林 千夏

特に印象深かったのが、今年から新たに加わったTシャツ部門(JOY Tコンペ)でした。テーマ自体の方向性が最初からクリアで、審査をする基準も分かりやすかった。本編のWSCAも実施コンペですが、T シャツの商品化は条件によりリアリティが伴っているので、審査に参加している側としても、より現実的な観点で選ぶことができて楽しかった。しかも、モバイルショップの提案の中には本編の応募作品よりも秀逸な提案が隠れていたりして…。中でもバケツの提案は良かったですね。企画書自体も見栄えよく、しかも分かりやすくきちんとまとめられていましたし。応募者たちのビジュアルシートでの表現はその重要性を改めて実感させられました。仮に審査員をクライアントに置き換えてみれば、「この提案者に任せて安心かどうか」を見るための重要な判断基準にもなるわけですから。でもそのことに、案外気付いていない人が多いのは事実だと思います。そういった観点で、バケツを使ったモバイルショップを提案した「作品名:Freddy World Pop Up Shop」は秀逸でした。扱うもの(Tシャツ)への愛情も伝わってきましたし。
あれだけ多くの応募作品の中から、「あっこれいいね、面白そう」と審査委員の目を惹く作品は、基本的にビジュアルシート自体が伝えたいことが分かりやすく、魅力的に仕上げられているものが多いのも事実です。コンペにおける審査員の目線って、物件を依頼するお施主さんの目線と似ていて、このデザイナーはどれだけのビジュアルのセンスや、編集能力があるかとか、そういった情報も同時に得ているわけですから…。
ちなみにこの部門においては、学生さんたちの提案が昨年よりレベルが高かった。プロより時間があるからかもしれないですが、それにしても細部までよく練られていて接戦でした。プロとの境目が分からなかったくらい。おおざっぱな言い方をすれば、現代はテクニカルな部分よりも編集力やディレクション力も大きく求められる時代ですから。そういった意味で、「よりリアルなシーン、そして受け取る側の気持ちや感覚を考慮したデザイン」が多く求められているように思います。例えばダイニングテーブルひとつとっても、料理好きな人が提案するテーブルと、全然料理に興味が無い人が提案するテーブルとでは、提案するものにものすごい開きがあるでしょうし。でも、私たちの目には、やはり前者が提案するテーブルの方が空間の中に置いても魅力的に映るのは当然の結果だったりする。規模はまったく違うけれど、Tシャツも同じだと思うんです。Tシャツがものすごく好きな人が提案したものと、Tシャツが単なる“商品”のひとつであるという人とでは、差は歴然。空間もTシャツも、より受け取る側(消費者)に『何を感じ、どういう気持ちになってほしいか』をカタチにするということがいかに大切かを、私たちも今回のコンペ(審査)を通じてあらためて学んだように感じています。

 

高橋 紀人(デザイナー)/神林 千夏(スタイリスト)

 

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graf 服部 滋樹

僕なりに全体を見て気になったのは、テーマやコンセプトの打ち出し方が均一的だった点です。去年に引き続き、『不思議の国のアリス』だとか「迷宮」的なキーワードだけで作品が6つも7つも出てくるし、どうして全く違う環境で育った人たちからこんなに被るテーマが出されるんやろう?と。素朴に「なぜなのか?」と気になった部分でもあるし、でもそれを「個性やビジョンがなさ過ぎる!」と言い放てば極論と解釈されてしまいがちだし…。ただ、深澤さんが「これだけ出てくる(応募作品の中にこれだけ多くのファンタジックな解答が出てしまう)ってことは、世の中の動き的に無視してはいけないものなのかもしれない」と言われていて、確かにそれも一理あるとは思うこの世の中…。
こう表現すると、ちょっとおおげさに聞こえてしまうかもしれませんが、自分のデザインで「社会を変えてやろう!」というくらいのパワーを感じたいというのが、僕の本音です。街角、施設、都市、ショップデザインから日常に刺激を与え、社会を変るほどの影響力は必ずつくりだせる。もっとたくさん歩いて、いろんな可能性を拾って、探って…。くだらないことに思えるような何かにも、思わぬヒントが眠っていることを、心の片隅におきつつ、来年またどうか「社会を変えてやろう!」という意気込みで参加していただけたら嬉しいです。

 

服部 滋樹(デザイナー)

 

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特別審査員 菊池 武夫

ファッションは、その時の社会情勢やニーズに常に対応して、それにすぽっとハマる答えを出し続けていきますが、僕自身はそれ(トレンド、もしくはトレンドが生み出される仕組み)には、あまり興味が沸かないのです。

これはデザイン全般において言えることだと思うのですが、特に店空間の場合、5年、10年、もしくは一生使い続けるかもしれない大切なグラウンドのようなものですから、目先のことだけでなく、「将来的にどうしていきたいのか」、「その店がどうあるべきか」という根本的な部分で、デザインよりも発想自体がもっと未来を見通したものであってほしいと感じています。

たとえば、「小さいオカモチで店をモバイル化する」というのも、現実的にも将来的にも在っておかしくない話だし、ひとつの新しい提案ですよね。今回のようなTシャツ以外にも、雑貨、靴、といったようにそれぞれのアイテムごとにモバイルショップ化して、それらを総合的なディレクションでイメージを作り上げ、一店舗に再構築するという提案も有りだと思います。つまり、様々な発想を結集させて、最終的にひとつの空間で包み込むという考え方ですが、それは今後ものすごく現実的な提案だと感じます。

Tシャツ部門においては、センス良くまとめたものがたくさん見受けられた半面、全体を通じて同じタイプの方向性で提案されたデザインが多く、欲を言えば、「もっと大胆な発想」を取り入れた作品を出品してほしかったというのがまず第一の印象です。ただし、プリントの提案が主だっていたなかで、Tシャツの裾をモーニングカットした作品は新鮮でした。70年代的発想で、即商品化できるデザインであり、素材、プリント等を乗せられる可能性も含む作品だと思います。

洋服がものすごく多様化している時代ですから、特にTシャツという題材自体は、その分面白くもあり、難しくもあり。それゆえにデザインを手掛ける作者は、たとえばカテゴリーやタイプ、性別といったように、このテーマを自分なりに絞りこんでいく必要があると思います。

空間、ファッション、いずれにおいても互いに二次元だけの世界でとどまらず、三次元の世界にも発展する様な発想を作ってほしい、それには、焦点を絞ることばかりではなく、もっと広いところに目を向けてできるだけ考え方を広げ、さまざまな切り口や発想を提案していくこと。そういったことが、デザインの未来における大切な課題かと思います。

 

菊池 武夫(クリエイティブディレクター)

 

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松宮 宏

デザイナーが創造活動を止めたら、次の時代は誰が作る? そんな思いでこのコンペを開催しています。デザイナーとは、新しいものを作りたいという欲求を精神に内在させる人種。経済危機が叫ばれる中でも、呼吸を続けている。今回も新しい観点を示すアイデアが多数寄せられました。ファッションビジネスのプラットフォームそのものを変えよう、という兆しを感じさせるものさえありました。受賞者とはこれからお会いし、消費者にとって居心地の良い店頭表現の実現に向け、協議を始めます。深澤審査委員長の言葉にもありますが、デザイナーの役割が変わってきています。デザインは受注産業ではない。チャンスはつかむものから、作り出すものへと、意識を変革していかねばならない。創造力を磨き続けてください。ともに事業開発のできるパートナーとの出会いを、これからも求め続けていきます。

 

松宮 宏(WSCAプロデューサー・作家)

 

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